◇組織委が50項目数値基準策定も

2020年東京五輪の既存会場のうち、座席が常設されている会場の8割で、車いす席数が大会組織委員会の定めるバリアフリー化の指針を満たしていないことが分かった。パラリンピックの会場はすべて指針を満たしていなかった。毎日新聞が既存会場の管理者を対象に行ったアンケートや取材で判明した。専門家からは「スポーツ施設で障害者の受け入れが遅れていることを示す結果だ」との指摘が出ている。

組織委は昨年1月、国際パラリンピック委員会(IPC)のガイドラインを参考に、東京大会の競技会場のバリアフリー化の指針「Tokyo2020アクセシビリティ(利用しやすさ)・ガイドライン」のうちハード面の基準を決めた。法的拘束力はないものの、車いす席数など約50項目の数値基準を設けた。

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指針は車いす席(アクセシブルな座席)比率の標準基準について、五輪会場0.75%、パラ会場1〜1.2%としている。だが、立候補ファイルなどに総座席数が明記され、既に座席がある15会場のうち、五輪の指針を満たしているのは、重量挙げの東京国際フォーラム(東京都千代田区)▽7人制ラグビーなどの東京スタジアム(同調布市)▽サッカーの横浜国際総合競技場(横浜市)−−の3会場のみ。パラは既存の全6会場が満たしていなかった。

06年施行のバリアフリー法は、スポーツ施設の通路などについてバリアフリーの基準を定めた。しかし、ユニバーサルデザインに詳しい東洋大の川内美彦教授は「肝心の観客席などの基準は定めてこなかった」と言う。国土交通省は15年、車いす席の比率を0.5〜1%以上とする指針を作ったが、川内教授は「IPCの考えが日本に入り、あわてて作ったに過ぎない」と指摘する。障害者で作るNPO法人・DPI日本会議(東京)の佐藤聡事務局長は「20年大会を機に車いす席の設置を義務付けるなどの法改正が必要だ」と訴える。

組織委の担当者は20年大会に向けて「指針を満たせない場合は人を置くなどソフト面で対応を図りたい」としている。

 

毎日新聞より引用